今回のご紹介させていただくお話は、90代の女性の故人様のお見送りのお話です。
農家で生まれ育った故人様は畑仕事が大好きで、丹精込めて育てた野菜で漬物や煮物を作るのが得意な料理上手なお母様でした。
そんな故人様へ、ご遺族の皆様からごちそうさまの想いを込めて【ありがとう箸】を書いていただきました。
「毎年干し柿を作ってくれてありがとう」
「味ご飯とフキの煮付が大好きでした」
「風邪を引いた時、おかゆを作ってくれて本当にありがとう」
大事に育てた野菜でお料理を振舞い、「美味しい、美味しい」と笑顔で食べてくれることを何よりも楽しみにされていた故人様。
普段の生活の中で「いつも美味しいごはんをありがとう」を伝える機会は少ないかと思います。
これまでの「ごちそうさま、ありがとう」を伝える場として【ありがとう箸】のご提案をさせていただきました。
皆様、故人様の作ったお料理を思い出しながら書いてくださり、こちらはお棺の中へとお手向けさせていただきました。
また、納棺の儀式の中で湯灌(ゆかん)の儀という、故人様のお身体を拭き清めていただく儀式がございます。
今回は桜の香りの湯でお手元やお足元を拭き清めていただきました。
参列された皆様へも湯灌の儀で使用した桜の入浴剤をお渡しさせていただき、桜を見た時に【お母さんと一緒に過ごした日々】を思い出していただきたいという想いを込め、ご用意させていただきました。
そして故人様が四十九日の旅を終える頃、暖かい桜の季節を迎えます。
私たちつむぎ菜根から、先立たれたご主人やお子様たちと極楽浄土にて数十年ぶりの再会をされた時、満開の桜の下で皆様で食べていただけるようにと桜餅とお茶のセットをお手向けさせていただきました。
お葬儀のお打合せの中で、喪主様から「料理上手な母だった」ということで、今回ありがとう箸のご提案をさせていただきました。
ご遺族の皆様の「ごちそうさま、ありがとう」の想いが、春風に乗ってきっと故人様の元に届いたのではないかと思います。
葬儀担当ディレクター:吉田瞳